novtanの日常

ネタです。ネタなんです。マジレスする人は撲滅すべき敵です。だからネタだってば!

誰得CDレビュー その2 "Europien Brass Band Championships 1990"

というわけで今年も誰得レビューです。

昔ちょっと書きましたが、僕が受験生の当時の池袋WAVEは海外版吹奏楽CDの聖地でした。
日本でもプロ(奏者)の英国式金管バンドがCDデビューし、「え、ブラスバンドって吹奏楽のことでしょ」という向きを論破するのが流行っていた時代です。イギリスでは山ほど出ているブラスバンドのCDも日本ではほぼ入手不可能。しかしあそこに行けば買える、と。

そんなお店で手に入れた一枚。マイナー盤ですでに廃盤というかレーベル自体多分無いよねこれ。

ブラスバンド(金管バンド)事情は僕なんかよりものすごく深いマニアがいる世界なので偉そうに語れませんけど、それじゃあレビューになりませんので分かる範囲で解説しつつです。

1990年は当時来日もしたブラック・ダイク(その頃は僕は楽器をやってなかったから当然存在自体知らない)がブイブイ言わせていたわけです。ヨーロピアン(コンクールじゃなくてチャンピオンシップってのがカッコイイっすね)も圧倒的な点数で制しました。そんなコンテストの模様を収めた一枚です。

1.The Essence of Time(Peter Graham) John Foster Black Dyke Mills

グレイアムってアメリカに渡って職業作曲家やってたんですよね。でまあ救世軍関連なのかな、そういうのもあって本格的にブラスバンドに曲を書き始めて晴れて初?課題曲になりました。今は課題曲も自由曲も常連だよな…

ちなみにヨーロピアンに限らずブラスバンドのコンテストは超絶レベルの課題曲を完璧に演奏するすごいやつらが集っているんですよね。

で、この曲。セッション版は他のCDが入手可能なんで(吹奏楽ファンで聞いたことない人は)ぜひ聞いて欲しいんですが、とにかく素晴らしいです。近年のハイレベルの曲はメロディーよりは構成で聞かせる曲が多いんですけど、この曲はとにかくメロディアスでかっこ良くて最高です。死ぬ前に一度やりたいんだけど金管バンドをやる気力もないので非常に困っています。

動画上がってるのユースのばっかりだから中間部の泣きのメロディーをアレンジしたテナーホルンソロの紹介


A Time for Peace by Peter Graham. Tenor Horn ...

2.Cloudcatcher Fells(John McCabe) Brass Band de Waldsang

最も権威のあるイギリスのコンテスト、全英ナショナルブラスバンドチャンピオンシップ、通称 The 'National’の1985の課題曲です。過去の課題曲クラスを自由曲として持ってくるのもヨーロピアンのお約束ですね。

まあ実に(現代)イギリスっぽい作風(強い調性感を出さない写実的なところとか)でメロディーを歌いたい感じじゃないですけどね、中盤から後半にかけての爆裂っぷりが面白い曲です。

3.Partita(Philip Sparke) Eikanger Bjorsvik Musikklag

この曲は(当時)BNFL BANDがセッションレコーディングしている版を聴いて僕がブラスバンドをやる一つのきっかけになった曲です。これ吹奏楽になってないけど確かに吹奏楽にしてもつまらないよな。やってるバンドはノルウェー(これもブラスバンドが盛ん)のバンドで、大変うまいです。例の鼻血ドラゴンを振ってるHoward Snellがゲストで振ってます。
確かこの自由曲としての委嘱作でミスも結構目立つのですが迫力ある演奏ですね。これの一楽章のトロンボーンの掛け合いをやりたいんだ…やりたいんだけど…一生やる機会がないだろうな…(という吹奏楽人の悩みをブラスバンド地獄といいます。今名づけた)。

この頃のスパーク先生の曲のエンディングは相当しつこいです。お、終わったか、あ、まだか、さすがに終わったかな?ええ?まだまだ?みたいな感じwでもカッコ良いです。2楽章の2拍子ではない6/8拍子ってのもオツですな。3楽章はタンギングできません…

4.Harmony Music(Philip Sparke) John Foster Black Dyke Mills

初期スパークの諸作品の中で傑作と言ったらやっぱり「ドラゴンの年」という人が多いと思いますね。吹奏楽にも編曲されているのがデカイんですが、僕はこの曲かCambridge Variationsかと迷います、というレベルの傑作だと思います。これもThe 'National’の1987年の課題曲で(その時の演奏聴いてみたいなー)、セッション版も多数ありますが、どう考えてもこの録音が今まで聴いた中では最高最強です。指揮はこの後Yorkshire Building Society Bandで前人未到の6連覇を達成するDavid Kingです。

音を重ねていくオープニングから始まって超速いテーマの圧倒的なドライブ感(スパークの諸作の中でも最もカッコイイと思う)、ラヴェルの亡き王女のためのパヴァーヌのオマージュである中間部の圧倒的なダイナミクスレンジ、そして再び圧倒的なスピードのメインテーマに戻ると最後に待っているのは更にドライブ感を増したエンディング。

吹奏楽やっててこれほど悲しいことはない。

音質良くない(演奏もちょっと荒い)けどBBCラジオが公開している音源

BBC R3 Bandstand: Harmony Music (1987)

5.Dances & Arias(Edward Gregson) Ila Brass

グレグソンもこの世界では重鎮です。ある意味はしり?
ブルジョワ(という作曲家ね、一応)を思わせる重たい音の重なりと暗くて切ないメロディーが特徴的な曲(曲名だけ見ると明るそうなのにねw)これもなかなかいい演奏ではあります。


というわけで、今日も誰得なレビューでした。そもそも入手困難な廃盤のレビューとかしてどうするんだって話で。