マネーフォワードが売掛金の買い取りを行う、ということで話題になっていますね。
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はてブのコメントにもいろいろ並んでますが、新手のほにゃららみたいなコメントも多いので、別に新しいスキームでもなんでもないよ、ということで簡単に書いてみます。が、僕は金融の専門家じゃないので細かいところ間違ってても勘弁な。
そもそも、会社にとって売掛金というのは回収リスクが常にありますし、リスクが低かったとしても債権含めた資産が十分にあってもキャッシュフローが回らない、という事故が起こりえますので、場合によっては仕方なく債権を現金化する必要があります。なぜ仕方なくなのかというと、当然手数料がかかるからですね。もったいない。キャッシュが潤沢な会社はよいんですけど…
で、債権というのは普通には現金化できませんので工夫が必要なんですが、世の中にはそれを流動化する=現金化する仕組みがいくつかあります。手形の割引と言われているのはその一つです。手形ってのは支払いを現金の代わりに手形で行うもので、期日になったら銀行に行って現金化してもらうものですね。よく不渡りと言われるのはこの手形を現金化しようとしたら口座に金がなくてできない、というやつです。なので手形の期日に合わせて資金繰りをする必要があります。これは支払う側の話。受け取る側は、逆に期日までは現金がもらえない、だと今度は別の支払いに対して現金が足りずに自分が振り出した手形が不渡りになり、と連鎖倒産することもありますね。そうじゃなくても、もらえる手形の期日より支払う手形の期日のほうが先にあって、資産金額的には全然足りてるのに現金が足りないということもよくあります。
なので、期日前に手形を現金化してもらう代わりに手数料を払う。これが手形の割引です。これは回収リスクを低減しているわけでは必ずしもありません(不渡り時の買戻し特約がついていたりするので)が、手元に現金が入ってくるというのは重要ですね。
手形に限らず、請求から支払いまでは期日があってタイムラグが有る、というのが一般的な商取引ですから、ここにも資金繰りのリスクがありますね。なので、手形ではなく、売掛金自体を買い取ってもらうことにもニーズがあります。一般的にはこれはファクタリング業者が取り扱う仕事になります。ファクタリング業者では保証ファクタリングと債権流動化を取り扱っていて、後者は手形と同様、売掛金の割引ですね。今回マネーフォワードがやろうとしているのは字面だけ見ると後者のように見えますね。
保証ファクタリングはもうちょっと複雑な話で、債務者が破綻したときに債権の金額を保証(つまりファクタリング会社が負担)する代わりに保証料をもらう、という仕組みだったりします。期日になったら債権を戻すので債権者がファクタリング会社を使っているのがばれないパターンと、ファクタリング会社から債務者に請求が行くのでばれるパターンがあります(そもそも事前に通知が行くことが多いはず)。前者の2社間ファクタリングは債務者や債権者の与信評価が低い場合が多く、リスクが高い=手数料が高いのですが、この手数料が利息制限法に引っかかるかがグレーゾーンのため、銀行、ノンバンク系の信用ある会社は提供していないことが多いですね。
というわけで、はてブに、実質融資じゃないのみたいなコメントありますが、それは正しくて、この業務はおおよそ融資と言っても良いと思います。ちゃんとした会社なら債権者、債務者ともにきっちりと与信を行い、極度額を設定し、取引をしています。今回の場合、手数料が1.5%~10%って確かに高い感じですけど、リスクを勘案すると上限側はそんなものかなと…
といっても、この現金化スキーム、現在はそれなりに問題ありげな業者(特に2社間ファクタリングだけやってる業者)も多くありまして、それなりに問題があるスキームではあります(手数料取りすぎ問題)。だから、マネーフォワードが信用できる会社かどうか、というのが大変重要な点でありまして、そのへんの街金と同レベルのファクタリング業者を使うよりはだいぶまし、という可能性はありますね。マネーフォワードは与信に活用できるデータを持っている、ということ(そういう用途で使ってよいという許可をちゃんともらっている前提ですが)なので、街金レベルの業者に比べて低い手数料を設定できる可能性は高いですね。