およそトロッコ問題というのは現実の問題の解決をはかるときに引き合いに出されるたぐいのものではない、論理と倫理の思考実験なんだと思うんだよなあ。
トロッコ問題は自分の選択によって確実に「どちらか」の結末を迎える前提で問われるものなんだけど、じゃあGoToはやれば地方の観光が救われる代わりに感染が拡大し（ということすら命題になっていないという根本的な問題がある）、Gotoやらなければ感染が拡大しない代わりに地方の観光が死ぬ、ということが運命づけられたことによる決断なのかというと全然そんなことはない。GoToをやった結果、観光需要がそれほど回復せず、感染が拡大し、とどめを刺す、という結果にすらなりうる。だから、これをトロッコ問題という人は本質的に問題を解決したいんじゃなくて、話を単純化して「これをやれば少なくともこれは救われる」という結論に持っていきたいってだけなんだと思うんだよな。
つまり、「観光に金を出すというこの状況下で一見愚策としか思えないものに正当性を付与する」ということ。
でもこれはトロッコ問題じゃないし、観光に金を出すくらいなら所得税の累進性を高めて召し上げたお金を地方にばらまいたほうが確実なんじゃないかなあ（そしてそれは政権が死ぬと思っているからできない）。
実に意気地のない政府の施策らしいですよね。
