novtanの日常

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ベンダーロックインを避けるためにはどうすればよいか

www.asahi.com

新聞のサイトなのでいずれ見えなくなるだろうけど「ベンダーロックイン横行か、独禁法違反の恐れも 公取委が見解公表」という記事ね。

これは原本見るべきだと思うので、拾ってこよう
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/feb/220208_system/220208_report.pdf

核心はここかな?

既存ベンダーと再度契約することとなった理由
既存ベンダーしか既存システムの機能の詳細を把握することができなかったため 48.3%
入札の結果,既存ベンダーが落札したため 33.6%
既存システムの機能(技術)に係る権利が既存ベンダーに帰属していたため 24.3%
技術的には他社にも委託できるが,以下の理由(自由記載)により既存ベンダーと特命随意契約を締結したため(自由記載例:既存ベンダーによる情報システムの安定的な稼働が望めること,既存ベンダーへの委託費用が他社よりも明らかに安価であること等)21.7%
既存ベンダーしか既存システムに保存されているデータの内容を把握することができなかったため 21.1%
既存システムに保存されているデータに係る権利が既存ベンダーに帰属していたため 7.1%
その他(自由記載例:プロポーザル方式やコンペ方式の結果,既存ベンダーが落札したためなど) 16.1%

うーん、ロックインねえ

こういう記載もある

・ 以前,ある情報システムの改修に当たって,運用主体を既存ベンダーから他のベンダーに変更することを検討していたが,当該システムのプログラムに係る著作権が既存ベンダーに帰属していたため,運用主体を変更することができず,結局,既存ベンダーと再度契約をすることとなった。(国の機関)
・ 既存システムは,これまで何度も改修されているところ,改修の度の具体的なソースコードの変更履歴については,既存ベンダーしか把握することができない状態となっている。当県としては,他のベンダーにも既存システムの保守等の調達に参入してもらいたいと考えているが,そもそも我々担当者がソースコードの変更履歴を理解できていないので,既存ベンダー以外に発注することができない状態になっている。(都道府県)
・ 新システムへの移行に際し,既存ベンダーから,企業秘密であるとの理由でデータフォーマットの開示がなされず,新システムへのデータの移行が速やかにできなかったため,その間の繋ぎとして,既存システムを再度契約することとなった。(人口5万人未満の地方公共団体)

ただ、公取委がベンダーを悪者にしているかというとそういうわけでもない。

情報システム調達において,官公庁が仕様書の作成や受注者との契約を行う際に,特定のベンダーに偏った仕様となっていたり,権利処理が適切になされていない可能性が考えられる。また,「既存ベンダーしか既存システムの機能の詳細を把握することができなかったため」や「既存ベンダーしか既存システムに保存されているデータの内容を把握
することができなかったため」という回答の背景には,官公庁において情報システムに関する知見や人員体制が不足している可能性が考えられる。
そのほか,調達単位が大きいため,既存ベンダーしか情報システム全体を把握できず,新規ベンダーの参入が進まず,既存ベンダーと再度契約せざるを得ない状況となっている場合もあると考えられる。

うんうん。

ただ、その先の有識者やベンダーの意見ってのがまあ「疎結合」「オープンソース化」に終止しているんだよねえ。それはそうってところもあるけど、別にベンダーロックインを疎結合にしたら防げるかっていうとそんなわけないんだよ。業務を成立させるためのシステムのアーキテクチャなんて個々の部分を疎結合にしたから簡単になるわけはない。業務要件を正確に把握し、疎結合にしたら複雑になりがちなアーキテクチャの整合性をきっちり見れて、システム運用まで含めた全体を統括できる人材が「潤沢に」ユーザー側にいる、ということが最も大事です。今までそうじゃなかったからその役割をベンダーがしなきゃならなかったわけじゃん。その結果ロックインになっていた、なんてのは単なるギャグだよね。なんだったらロックインの変わりに安く作れていたかもしれない。密結合になっていることはベンダーロックインの原因になりうるけど、疎結合にすることが解決策、では決してないんだよ。

例えばだけどさ、システムの仕様が法律の条文だと考えたときに、「我々の手に負えないから弁護士の先生にお願いする」か、自分たちで頑張るかって話だよね。今まで前者を選択し続けてきたことを「ベンダーロックイン」という言葉で腐すのってどうかと思う。
ベンダーロックインを避けるのが至上命題なのであれば、システムの構成変更を考えるよりもまず先にやるべきことは、内部に複数の有識者(それもガチの)を作る、ってことだよね。そこまでしてベンダーロックインを避けて実現するのがあっちのベンダーとこっちのベンダーのやることを上手く調整して苦しむお仕事だと思うとやりたくなくね?

とはいえ、守りに守るベンダーってのもいる。既存の仕様書を「うちが著作権持ってるから」みたいな体で出してこないベンダーは本当にいる。顧客のビジネスを阻害して恥じない、という姿を見るとユーザー側がロックインロックイン言うのもわかるんだよね。そういうクソなベンダーには滅んでほしい一方で、「安く作って欲しい」から既存資産を流用する代わりに著作権はこっちだよ、みたいなのも普通にあるよね。真面目な話、現代のシステムってのは他社が権利を持っている資産なしにはなんにも作れないわけ。本当にそれが嫌ならOSからスクラッチで作るしかないし、そういうことをする意味はない。一度作ったシステムを違う形にリプレイスするのはカネがかかるし、それを「ベンダーロックインしているベンダーが悪い」というのはお門違いだよね。ちゃんと金を適切に払えばそれなりのことができる。

まあ、過渡期というか、2000年代からここに至るまでの中に移行が難しいシステムを売りつけたベンダーがいるのも確かなんだけど、結局の所それはシステムというものを軽視していて真面目に考えてなかったツケが回ってきただけだし、そうじゃない会社は上手くやっているんだよな。

官公庁に限って言えば、くだらない政治で出来上がってるシステムが多いんだから、自分たちの行動のツケと思って覚悟して金を出していくしかないと思うんだよなあ。金も人もないなら、ベンダーに頭を垂れてやってもらうしかないよ。