本件については研究そのものの正しさとはなんの関係もなく、ただ名誉毀損かどうかが焦点になっている。名誉を毀損されたという主張が認められたのは必ずしも事実とは言えない「捏造」という言葉を用いた結果であると解釈している。
もちろん、その過程の中で、研究の正しさが認定されてしまうというリスクはあったと思うけど、今回の判決においてはむしろ研究そのものについては大変ネガティブな評価をするというかなり踏み込んだ内容になっている。
敗訴について文句を言っている人はかなりの割合が「HPVワクチンの安全性とは何の関係もない」と強調しているけど、それは当たり前の話で判決そのものがそういった判断をしているのに何言ってんの?という感想しかわかない。研究の正しさとは何の関係もなく、名誉毀損を認定できる事実があっただけである、という至極真っ当な話でしかない。
ともあれ、捏造した、という点についての名誉は回復したと言える。別にそのことが研究者としての名誉を回復したわけでもないということはわかっているだろうが。
このことはつまり、名誉毀損するような言葉を使わなくても十分に研究を非難できたということに他ならない。もっとも、国民感情に訴えるためにあえて不正確な強い言葉を使ったということであれば、この判決自体は当たり前の結果として粛々と受け入れるべきだと思う。