novtanの日常

ネタです。ネタなんです。マジレスする人は撲滅すべき敵です。だからネタだってば!

隣人の思想がわかっても

秘書官の発言の件はなかなかアレで、この時代に至ってそれなりに立場のある人が世間に向かってあんな公言をしてしまうって単なるアホなのか、本気でその考えを世に浸透させたい危険人物なのかも判断しづらい感じなんだけど、まあそういうのを見てしまうと色々思うところはある。

僕らは内心の自由は認められるべきだし、内心を暴露しない限り、どんな内心であれそれを思うがゆえに罰せられることはない、というのを基本的人権の一部と捉えているよね。これはよく考えるまでもなく当たり前のことで、例えば魔女狩りのように拷問を受けて、自白したら死、自白しなくても死、ということを国家に強要されるようなことは認められないってことだよね。もっというと、これは「暴露したら罪」であることも否定することになる。じゃないと、「お前の内心は本当はこうだろ」と自白を強要されて暴露をしたら罪、暴露をしなかったら拷問、みたいなことが許されてしまう。内心は暴露をしなくて良いから自由なのだよね。

さて、今回の話、何が問題かって言うと、まず僕たちは「内心がどうあれ、社会の規範に従う」ことが期待されているし、それができるから人間社会であり続けることができると思っている。社会の規範は時として理不尽なこともあるし、古くて腐っていることもあるから、アップデートをしていかないと現実の社会とおりあっていかない(ここが結構ポイント)。現実の社会を変えるためにいろんな運動が起きるし、渋々かもしれないけどそれを新しい規範として受け入れて、社会は変わっていく。ここで一つ問題なのは「渋々かもしれないけど」受け入れている人がたくさんいるってこと。これは純然たる事実だと思うし、これも自由な内心なんだよね。だから、「お前はアップデートできてない」みたいな話ってちょっと僕は傲慢なことだと捉えている。誰もがそれを納得しているコミュニティーは一つの内心であり、そこから逸脱しない限りはそのコミュニティーの中で内心を暴露すること自体は問題ではないと思っている。ただし、それが社会に対して暴露されるとそれは社会の規範によって量られるよね。今世紀に入ってからこの手の問題が増えているのはそのコミュニティーの境目が分かりづらくなったから(主にインターネットとマスコミのせい)だと思うけど、それにしても、不用意な人間が多いと思う(これ、もとからなのか、劣化しているのか、いまいちわからない)。

問題は、「そういう人がいる」ことに対する恐怖だよね。でも、実際には隣人の内心がわかっても、わからなくても、怖いことは変わらない。100%こっち側であることが保証されている人って、実はいないんだよね。じゃあ、もしテクノロジーでそれを色分けすることができるようになったら?その結果は社会において敵と味方がはっきりすること、でしかないと思う。そしてそれは建前でなんとか成立している社会がはっきりと人が人と対立し続ける社会に変容していくことだし、極端な話だと人類は衰退すると思うわけ。
これはあまり冗談ではない話だし、だからSFにおいて思考が統合されたような高次元の存在が人類の社会性の低さに驚くような話にもなるよね(もっとも、集合体としての生物が高次元と本当に言えるか、は今の僕たちにはわからないけど)。

ともあれ、僕たちは「お前の内心はおかしい」という批判はしてはいけない(時代に合わない、とか改めたほうがよい、とかは言っても良いと思うが、今抱えている内心そのものを無条件で否定してないけない)。するべきなのは、「お前はその内心を暴露する範囲を誤った。範囲外の人に謝罪せよ」なんだよね。でも、こういう言い方するとおそらくその内心にさらされた当事者たちは怒るか、怒らないまでも納得しないことが多いんじゃないかな。でも、社会というのはそうやって成り立たせていくべきものだと思うよ。理解できない者同士が建前で折り合っていく、ということが出来ないのであれば、ある価値観をもとに別の価値観を滅ぼすことは正当化されてしまうからね。