はてなダイアリーを使っていた頃のトラックバックの応酬の話はある程度古参のウェブユーザーであれば懐かしいものだと思う。トラックバックが良かったのは、それなりの規模の文章でのやり取りを相手を明確にしながらできたことではあるし、外野が議論をたどりやすくなることで過程がきっちり残せたことだと思う。もはや、それも過去のものではある。
トラックバックによる複数サイト間の連携は今のSNSのシェアとも当然違うし、スレッドが伸びていくものとも違っていて、ウェブのコンテンツと呼ばれるに値する議論をできなくもないレベル(雑誌で毎号議論の応酬が行われるようなものだ)のものも生まれるポテンシャルを持っていたものだったけれども、ツールが衰退すると様式も衰退するもので、トラックバック亡き後、時間をかけた丁寧な議論というものは減っていった印象はある。SNSへの連携もこと議論を深めるという観点からはあまり意味のあるものではなく、クソリプを生むだけの力しかない。
カジュアルなサービスが議論の場を放棄し、議論プラットフォームみたいなものが試みられては潰れていった。これは実際には特定の用途ではないそれぞれの場で行われているものをうまくつないでいたトラックバックというシステムが特異に機能していたことを意味しているのではないかと考えている。場を限定しないからこそ、議論の発端はカジュアルであり、特定の人だけが参加しているわけでもなく、しかし、繋がって議論することができる。もう少し早くSNSが登場したり、ブログが金稼ぎの場になったりしなければ、もしかしたらブログというものがトラックバックに荒らされて困る、という世界にならず、トラックバックが存続したのかもしれない(まあ人口の増加に起因している気もするのでこれはないだろうけど)。
はてながIDコールをやめるというのもあくまでブックマークからの話だと理解しているんだけど、ウェブのサービスが利用者の住み分けに失敗している現状を考えると、議論を深めるためのツール(=議論したくない人にとってうざいツール)は衰退していくのだろうと思う。はてブそのもののツールとしての性質を考えるとこれはあまり良くないことなのかもしれないとは思っている。